たたら製鉄は自然破壊だったのか

たたら製鉄,出雲

「菅谷たたら」は・・・「もののけ姫」にも登場した・・・・と紹介されることが多いのですが、 同時に“たたら製鉄=自然破壊”という一言が添えられがちです。映画の悪影響だと思いますが、かつて司馬遼太郎も「街道を往く・砂鉄道」で、・・・・世界史的にみても鉄生産が盛んだった地域は、木炭を得るために森林を伐採し尽くして禿山・砂漠化している。大陸や朝鮮半島も例外ではない。“たたら製鉄”も大量の木炭を必要としたが、日本は樹木の復元力が旺盛であったため結果的に自然破壊が防げた・・・・と説明しています。 古代より製炭原木を求めて移動を繰り返していた“野だたら”については司馬の説明が正しいでしょうが、奥出雲で広く行われていた“企業たたら”は違います。

資料によって数字の多寡はあるのですが、最盛期の“企業たたら”は年間60代(よ)以上操業、1代(よ)で砂鉄8トン・木炭13トンを使用して2.5トンの鉄(鉧・けら)を得ます。俗に玉鋼と呼ばれる高品質の鉄はその1/3程度です。1代で必要となる木炭13トンは製炭原木だと約90トン、薪炭林だと1ha≒1町歩に相当します。最盛期には“たたら場”1か所あたり60ha≒60町歩の森林が毎年伐採されていた計算です。

中国地方の森林は概ね30年で樹勢が回復します。そこで“企業たたら”では所有する“たたら場”1か所につき60ha×30=1,800haの薪炭林を確保して輪伐期施業をおこなっていました。平均すると所有林が4割、松江藩から借りた藩有林が6割程度です。

自然が生産基盤であり自然との共生が生存戦略の一部でもあった時代、人々は畏怖し敬いながら自然と向き合い、制度的・技術的改善を行っていたと思います。今日的な意味での環境配慮は不十分かもしれませんが、自然破壊として否定的に語ることだけが正しいのでしょうか?

私は“たたら製鉄=自然破壊”と安易に語って欲しくはないのです。

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