”わび・さび”

建築デザイン

 “わび・さび”として表現されることの多い日本的美意識、漠然としたイメージとしては枯淡の境地といったものでしょうか。本来、“さび”は“寂しい”、“わび”は“侘しい”に通じる言葉ですから、満ち足りていない状態や孤独・疎外感を表す否定的な意味だったはずですが、時代を経るにつれて閑寂の趣を表現する言葉として用いられるようになりました。

現在、“わび”と“さび”は同じような意味として用いられますが、時間という観点では違いがあります。“わび”は時間が経過してきた様、例えば、雨垂れが穿ったくぼみやすり減った石畳などに感じる美で、“さび”は時間が止まった様、例えば、古戦場や廃墟などに感じる美となります。単純に言い換えると、古び(に感じる美)と滅び(に感じる美)ということです。

日本文化に関する説明ではよく目にしますが、素人が軽々しく口にできない雰囲気も濃厚にあります。その理由は、茶道における“わび”に顕著ですが、芸術分野ごとに特別な意味が与えられてきたこと、さらに、明治時代に西洋哲学に対抗しうる東洋的認識という役割が与えられたことです。

美的感覚の一表現であった“わび・さび”という言葉が、哲学的・仏教的思索を重ねて初めて感知し得る境地を表す言葉に格上げされたことによって、口語の世界では滅多に使われない言葉になってしまったようです。活字の世界では半永久的に残る言葉なのでしょうが、現在では、使い方を間違えると書き手の衒学趣味を匂わすだけの言葉になってしまいました。

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