正倉院・エンタシス・鰹木

建築史

 歴史的建造物の雑学的知識について質問されることがあります。都市伝説や迷信の類を工学者が研究・検証していることは稀ですから学問的に否定されているわけではなく、観光トリビア的なエピソードを否定するのは野暮でもあり、そうはいっても科学的・工学的見地からは肯定できない・・・という逡巡はありますが、“それって本当?”と聞かれた場合は、“真偽という意味では、限りなく偽”となるケースも結構あります。

古典的なところでは、正倉院の校倉造りの壁には調湿機能があり、収蔵されている宝物を守っているとか法隆寺の柱の膨らみはエンタシスといってギリシャ建築に通じるといった話です。最近では否定的に説明されることも増えてきましたが、そのこと自体、偽情報がまだまだ拡がっていることを証明しているのでしょう。数年前に耳にした話は、神社の鰹木(屋根の上に載っている俵型の横木)は、祀られている神様が男性なら奇数、女性なら偶数になっている、というもので、この原則に当てはまらない神社には過去に何らかの謎が・・・といった盛り上がりも一部でありましたが、これも限りなく偽情報。

“神社は南向きに建てるものですよね”と聞かれたこともありました。実際、ほとんどの神社は南向きに建てられています。神社が拝殿を持つようになった経緯や神仏混交の影響などを考えると、これも正しい説とは言い切れません。しかし、地域に残された古伝の類には民俗学的な背景が隠されている場合もあったりします。工学的判断とは別に古伝が生まれた理由を考えてみることは意外と面白い趣味になるかもしれません。

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