建物の耐用年数とは

建物の耐用年数は、物理的耐用年数、機能的耐用年数、社会的耐用年数のいずれかによって決定されます。物理的耐用年数は、経年劣化による性能低下が限界を超え通常の修繕や部品交換では回復しないと判断される状態を指し、鉄や木材の腐食、コンクリートの中性化による構造躯体の劣化、建築材料の磨耗・変質、設備機器の老朽化などが代表的です。機能的耐用年数は、狭い、使い勝手が悪い、日当たり・風通しが悪い、暑すぎる・寒すぎるといったものから、バリアフリーや耐震性能の向上など、利用者が要求する機能・性能に建物が応えられなくなった状態を指し、増改築や建替え需要に結びつくこともあります。社会的耐用年数は、税法上の耐用年数(減価償却資産)や法改正の遡及適用(消防法など)によるものなど明示的なものと、資産運用における経済性判断(経済的耐用年数)や店舗デザインの陳腐化など主観による判断の両方を含んでいます。
ある程度、客観的に判断できるのは物理的耐用年数です。昭和55年にはじまった建設省総合技術開発プロジェクト「建築物の耐久性向上技術の開発」では、躯体に重大な損傷を生じさせない目標期間として、鉄筋コンクリート造建築物の場合はⅠ級で100年間 Ⅱ級で65年間を、建築学会・BELCA・BCSなどの機関では100年(あるいは100年超)を提唱し、現行の住宅性能表示基準は3等級が75~90年(3世代居住)、2等級が50~60年(2世代居住)とされていますから、通常は60年、高性能・長寿命を目指す場合は100年というのが物理的耐用年数の目安と言えそうです。
60~100年の長きにわたって建物の健全度を維持するためには維持管理を適切に行うことが重要ですし、設備機器の過半はリニューアルが必須です。現状、長寿命化のための公的支援は設計段階におけるものが中心となっていますが、適切な維持管理が経済的メリットをもたらすような仕組みをもっと充実すべきでしょう。被災するなどの特別なケースを除き、現実の場面で建物の寿命を判断するのはと機能性や経済性によることが多いのではないでしょうか。