和風・和の暮らし・和モダン?

和風庭園や日本建築といった言葉は日常生活でごく普通に使われますが、学問上の定義がある言葉ではないため、専門書で使用される場合は著者によって“この本の中では〇〇という意味で使用する”と注釈が付くこともあります。広告や旅行雑誌などマーケティングの世界では、伝統的な建築・庭園をイメージさせるときによく使われている印象です。“和風〇〇”・“和モダン”・“和の暮らし”といった表現が代表的でしょうか。
和風といってもイメージは幅広く、平安時代の雅な王朝文化、中世武家社会の書院建築に代表される質実な佇まい、華麗華美ともいえる桃山文化やそれに先行するバサラ、茶道の興隆から生まれた“わびさび”文化などが続き、江戸時代に入ると桂離宮と日光東照宮ができていますから、相反する美意識が並存していたことになります。その後、歌舞伎や浮世絵にみられる庶民文化も加わり、今現在、藁葺き屋根の古民家に代表されるような自然と共存する生活文化を“和の暮らし”と形容することもあります。これら全てのデザインを“和風”と呼ぶことも可能ですし、“和風”テイストをアレンジした“和モダン”という呼称も定着した感があります。
もちろん、列挙した事例以外にも“和風”はあるでしょうし、関心やこだわりの強い方は具体的な事例や出来事を語ってくれますから、だいたいのイメージは共有できますが、たまに、「和のイメージでお願いします。」と言ったきりでそれ以上は何もでてこない人にも遭遇します。”和風”とよく似たケースで行政サイドから多いのは、“街並みとの調和”や“景観への配慮”です。歴史的町並みや景観に関する取り組みがあっての発言であれば当然の要望でしょうが、そういったものが全く見えない場合は設計者に丸投げしているようにも感じます。価値観やイメージを共有しながら設計するケースは意外にも少ない気もします。