ホテル宍道湖庭園

庭園紹介,松江

今回紹介するホテル宍道湖庭園は、もう見ることができなくなった庭です。作庭は重森三玲の長男重森完途で、昭和48年(1973年)の設計とされています。

ホテル宍道湖は島根県松江市にあったホテルで、名前が示すように宍道湖南岸に面して建てられていました。地方職員共済組合の建物ですから県職員などは格安で宿泊できるのですが、もちろん一般客も利用可能です。繁華街とは離れているのでビジネス向きではありませんが、1階のレストランでゆったりとランチタイムを過ごした方も多かったと思います。ホテルの2階は会議室や宴会場です。そこから見下ろすように鑑賞する庭で、遠景は宍道湖、近景が庭園という構成です。建物が耐震基準を満たしてないこと、(新耐震基準は昭和56年に施行されました)や改修工事に伴うアスベスト除去等に多大な費用が掛かるため再利用を断念、数年前に営業を停止し、つい最近、解体工事が始まっています。

営業停止からしばらく経ったころ、当時は解体されるかどうかも未定の状態でしたが、建物本体の再利用が難しいのであれば庭園が残される保証もないとの予想はつき、特別にお願いして庭園の写真を撮らせてもらいました。このため、普段は立ち入ることができない屋上からの写真もあります。地上レベルではそこまで意識しないのですが、俯瞰すると直線を多用しためずらしい庭であることがよく判ります。使用されている白砂、青石、松は庭によく使われますが、レンガは異色です。いってみれば、コンポジション芸術を庭で行ったような塩梅で、白砂を白いキャンパスに見立て、青(舗石と立石)、赤(レンガ、赤い舗石、目地)、緑(松と地被)の3色を使って描かれた現代絵画のようです。

重森完途はホテル宍道湖庭園の他に、島根県庁、(旧)島根県立中央病院、出雲市立図書館の庭を設計しています。島根県庁庭園は周辺の近代建築群(設計:安田臣、菊竹清訓など)との一体的整備によるものですから、早々に姿を消す心配は無いのですが、それ以外はどうでしょうか。

古いものの価値を認める人は多いのですが、少しだけ古いものは価値が低いと思われがちです。近代建築は最近注目されるようになったのですが、皮肉にも、大半の近代建築が姿を消し希少価値が増したせいでもあります。庭はどうでしょうか。古いものが消えていくのは自然なことだと思いますが、完途が設計したユニークな庭園も話題になることなく消えていくのは、少しだけ残念です。

写真は、屋上からの全景。赤と青の舗石、レンガのオブジェ?と2階からの俯瞰です。

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