庇と太陽高度

建築の設計手法の一つにパッシブデザインというものがあります。パッシブはアクティブの反意語で受動的とか消極的という意味。機械設備によるアクティブな環境コントロールではなく、建物自体で環境(熱や空気の流れ)を制御して快適な室内環境をつくる手法です。省エネルギーが社会問題になったころに注目され始め、当時、夏至・冬至の日の南中時の太陽高度と風の流れを書き込んだ断面図をよく目にしましたが、最近はそれほどでもありません。手法として完全に定着したからでしょうか?
断面図に太陽高度を書くのは、庇によって夏の暑い日差しを遮り、冬は室内に太陽光を取り入れられることを説明するためですが、夏至の日の南中時(正午ごろ)の日差しカットで快適な室内環境が実現するとはとても思えません。少なくとも秋分(9月中旬)頃までは昼間数時間の日差しを遮る必要がありそうです。夏至の日の南中太陽高度は77度で秋分の日は54度ですから、断面図に書かれる太陽高度は50度~55度でなければ実効性は疑わしいと思います。
掃出し窓(窓の下端が床と同じ高さの窓)に対して太陽高度50度~55度の日差しを遮ることのできる庇をつくると外壁から2mほど出てしまいます。普通に見かけることはありません。古い日本家屋では畳敷きの座敷と庭の間に縁側がありました。この縁側と庇を合わせた長さは座敷からだと1.8m前後となります。これで夏の暑い日差しを防いでいたのでしょう。今なら庇付きのテラスを設けることで可能かもしれません。
新しく建つ住宅の窓を見るとあまり庇が付いていません。この10~15年間で断熱・遮熱性能が格段に高いガラス窓がリーズナブルな値段で普及したので省エネルギー基準も無理なくクリアしていますが、庇の役割は夏の日差しを遮るためだけではありません。住宅が建つ場所の周辺環境や住む方のライフスタイルにも寄りますが、陰翳ある外観をもった住宅がもう少し増えて欲しいと思います。