建物の長寿命化・住宅

住宅について建物の長寿命化という命題そのものが成立するのか?という疑問があります。江戸時代や明治時代に建てられた古民家と呼ばれる住宅は、子孫が何代にもわたって住み続けることを前提にしていますから、建設費の捻出、部分的な増改築、傷んだ部分の補修などを行いながら100年~200年と住み続けるものでした。この時期に建てられた家を現在も守り続けている方々はおられますがその数は多くないでしょう。現在、新しく家を建てる人の多くは一代限りのローンを組んでいますし、将来、その家に子孫が住み続けることが当然だと考えている人は少ないでしょう。住宅の多くは、100年~200年どころか30年たらずで耐用年数を迎えています。
住宅の長寿命化は社会全体の省資源・省エネルギー化に直結する取り組みですが、個人にとってのメリットが明確とはいえません。耐用年数30年を100年に伸ばすためのコストアップを社会正義に目覚めた個人が負担すべきというだけでは実現は難しいでしょう。
現在、築後数十年たった住宅に資産価値が認められるケースはほとんどありません。解体・除去費用分だけマイナス評価となることも普通にあります。仮に建物自体(主に構造)が良好な状態だったとしてもそれをプラス評価する社会的仕組みがありません。公共性の高い不動産評価・保証システムが確立しなければ健全な市場が形成されることも難しいでしょう。萌芽的試みはありますし、国もローン金利の優遇や地震保険料の割引など行っていますが不動産評価に結びつくかどうかは未知数です。
将来的にシステムが用意されたと仮定します。そこで行われる不動産評価において建物の健全度が寄与する割合はどの程度あるでしょうか?個人の価値観にもよりますが、評価ポイントとして重要度は住宅が建っている場所の周辺環境や敷地条件、次いで建物のデザイン・間取り(可変性も含めて)、健全度はその次ぐらいではないでしょうか。個人の努力や経済力では及ばない項目よりも重要視されることはないでしょう。耐久性を軽視した設計・施工は論外ですが、高耐久性やメンテナンスフリーを安易に求めすぎて全体バランスを欠いては意味がありませんよね。