瓦屋根について 1

本格的に建築設計を始めたのは平成のひと桁の頃ですが、そのころ設計協議の場で役所の担当者から、なるべく勾配屋根で設計してくださいとよく言われました。昭和40年代に建てられた公共施設の多くは鉄筋コンクリート造で陸屋根です。役所では建物の漏水対策に悩まされ続けているようで、かなり切実な思いがあるようでした。メンテナンスをあまりしていないことも原因のひとつでしょうが、当時、建物の維持管理の重要性を認識し、そのための予算・人員を持ち合わせていた組織などほとんどなかったでしょう。漏水の原因がなんであれ、陸屋根は忌み嫌われていました
勾配屋根にする場合、屋根葺き材の選択が問題となります。私は瓦屋根が好きなので、設計した建物の大半は瓦葺です。瓦以外の軽量で安価な屋根葺き材は当然あったのですが、10年~20年後の劣化した状態を目にすると、当時はどうしても使う気にはなれませんでした。建設地の周りが民家の多い場所であれば、街並みに配慮していることにもなりますから、瓦屋根に難色を示されることは少なかったと思います。稀に、風が強く、人が住むことを拒んできたような場所に建物を建てることがありますが、それでも予算が許す限りは瓦屋根(接着工法)で設計をしてきました。
阪神淡路の震災以降、瓦屋根は地震に弱いと言われ続けてマイナスイメージも定着してしまいました。重たい屋根は地震に不利というのは事実ですが、少し言い過ぎだと考えています。古い日本家屋や寺社の瓦屋根は野地板に土を載せて瓦を密着させながら葺いていました。当然、屋根は重たくなります。構造設計で屋根の荷重を計算する場合、瓦屋根(葺き土あり)は980N/㎡、瓦屋根(葺き土なし)は640N/㎡の固定荷重をみることになっています。N/㎡という表現が解りにくいかもしれませんが、ざっくり言えば、設計上、葺き土ありなら100kg/㎡、葺き土なしでも65kg/㎡を考えろという話です。
設計上の基準値ですから安全側(条件としては厳しい)になっているのですが、実際の瓦屋根は一般的な桟瓦で45kg/㎡前後、軽量瓦なら35kg/㎡程度です。
屋根の荷重以外に積雪荷重も検討します。積雪荷重は積雪1cmにつき20N/㎡で計算しますから。積雪1mだと2000N/㎡にもなります。実際の積雪が1mを超える地域は多くありませんが、これも安全側の設計になるように設けられた基準。山陰地方でも少し山沿いの地域は該当します。つまり、雪のために2000N/㎡の積載荷重(積雪荷重)を考慮し、それに屋根葺き材や小屋組みを構成する木材の荷重が加わる訳ですから、そこで屋根葺き材だけの重さの違いを過剰に気にしてもしょうがないように思います。屋根葺き材の重さだけを比較すれば瓦屋根の半分程度の材料はいくらでもありますが、それが材料選択の最重要ポイントとは思えません。