2つの生物多様性

最近はSDGsという言葉にとって代わられた感もありますが、ひところ環境問題を語るときにやたらと連呼されていたのが生物多様性です。この言葉をマスコミが喧伝し始めていたころ、いろいろな方から「生物多様性ってどういう意味ですか」と尋ねられました。生物多様性という言葉は本来、生物学で使われていた学術用語ですから、当時は書物やネットで調べても「生物多様性とは、種の多様性~~~云々」と学問上の定義しか書かれていないことがほとんどでした。マスコミなどでの使われかたとはニュアンスが異なる説明で違和感があったのだと思われます。
日本語の生物多様性には2つの意味があります。1つ目は学術用語としての「生物多様性」、もう一つは政治的スローガンとしての「生物多様性」です。マスコミなどが使うのは後者のほうで、最近は前者の意味で用いるときには「生物学的生物多様性」ということもあるようです。混乱を招いた原因は日本語訳のようです。英語では前者が“biological diversity”、後者が”bio diversity”で微妙に異なる言葉になっています。
学術用語のほうには“logical”が入っていますから非常に理にかなっていますし、あえて”logical”を抜いてスローガンにしたとも考えられます。政治的センスのある生物学者・環境学者がいるものです。
ところで最近はやりのSDGsですが、”sustainable”の日本的解釈が微妙に気になっています。持続可能=保護・保全(できれば復旧・回復)といった側面が強調され、自然利用についての新たな関係性を構築するという側面が見えてきません。これまでノスタルジックにあるいは理想的に語られてきた自然観を検証することもなく、むしろ旧来からの自然保護思想こそが正当だったと捉えられているような気がします。