古代出雲 オロチ神話その3

スサノオ,出雲神話

スサノヲのオロチ退治は“オロチ=斐伊川”の氾濫を治めたことを意味すると説明されますが本当にそうでしょうか。治水技術が発達して山岳地の盆地が開発されてくるのは戦国時代のこと、下流平野部の開発が進むのは江戸時代のことであり、スサノヲが活躍した?時代に斐伊川の治水が可能だったとはとても思えません。あるいは“鉄穴ながし”による河床の上昇や河川の汚濁などに起因する製鉄民と農民との諍いが基になっていると説明されることもありますが、これも“鉄穴ながし”の始まりは中世以降、完成と普及は宝暦年間(1751~1763)であることから時代的に矛盾します。

スサノヲとイネダヒメ(稲田姫・農神)との婚姻関係についても、スサノヲによる農耕生産への寄与を示すと説明されますが、『記紀』に描かれているスサノヲは反農業・反稲作的であること、『出雲国風土記』において農耕生産や国造りへの寄与はオホナムチに顕著であるという事実に対して何ら説明できていないと思います。

本来、オロチ(嶺の霊)とは山の神であり、農耕生産の立場からは貴重な水をもたらす水神だと考えられます。松前健の著書『出雲神話』にあるように、原型はオロチ・水神とイナダヒメ・農神?巫女?の婚姻による豊作祈願であり、アニミズム・動物神信仰の衰退によってオロチは怪物化し人間的英雄神としてスサノヲが登場したのではないでしょうか。スサノヲの行動パターンからは雨の隠喩(水神の一側面)も伺われます。

『出雲国風土記』には“スサノヲのオロチ退治”と話の構造がよく似た玉比賣命と和仁・ワニの物語があります。和仁とはサメのことを指しますが、水棲の細長い生物は水神でもありますから、ここでも和仁(水神・動物神)と玉比賣命(おそらく農神か巫女)の婚姻関係は崩れています。

これがオロチ神話のベースになったのではないかと想像しています。

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